研究課題/領域番号 |
11164215
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丘山 新 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (90185489)
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研究分担者 |
佐古 年穂 駿河台大学, 現代文化学部, 助教授 (70296284)
土田 龍太郎 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20163826)
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キーワード | 維摩詰経 / 浄土経典類 / 倶舎論 / インド伝統思想 / 漢訳 / 大乗仏教 / 救済思想 / 道教思想 |
研究概要 |
丘山は『維摩詰経』と浄土経典類、佐古は『倶舎論』、土田はインド伝統思想を資料として、仏教の主要概念の伝承と受容の問題に関して研究を進め、共同討論を重ねて共通の認識を持つに至った。 丘山:『維摩詰経』には3種の漢訳があり、丘山はその3本の対照本を作成した。このことにより、中国の3世紀・5世紀・7世紀における漢訳語の変遷が一目で解るようになった。また、漢訳の際に用いられる用語が中国の伝統思想の概念をいかに多用しているかが実証的に明らかになってきた。この対照本は現在公開準備中である。また、丘山はインド大乗仏教の最初期の経典である『大阿彌陀經』(漢訳)をとりあげ、そこに現れる1)救済思想の意味、2)永遠の如来(阿弥陀仏を始めとする多くの如来)、3)見仏(仏にまみえる)思想を研究し、インド大乗仏教出現の意義を「他者の発見」として再解釈した。それと併せて、浄土経典類が中国にもたらされて翻訳された後漢時代に、中国では道家思想や神仙思想などを基にして道教思想が出現し、中国にも一般民衆を対象とした救済思想が出現してきたことを新たに指摘した。このように、紀元1世紀から2世紀における救済思想の出現は、単に地域的な問題ではなく、人類の精神史における重要な問題であることも解明した。 土田は仏教思想に先行するヴェーダ文献、また仏教思想の形成と時代的にも重なる『マハーバーラタ』『マヌ法典』などのインド伝統思想文献から仏教の主要概念に関する語彙を蒐集し、仏教思想の形成に果たしたそれらの文献からの影響を解明した。 佐古はインド仏教の基本的教理書である『倶舎論』の文献的整理を進め、サンスクリット原典、眞諦訳、玄奘駅、さらにはチベット訳の対照表をコンビユータ上で利用すべく順調に作業を継続中であり、近将来に公開することになる。
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