研究課題/領域番号 |
11164218
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川中子 義勝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60145274)
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研究分担者 |
中井 章子 青山学院女子短期大学, 教養学科, 教授 (10172256)
松浦 純 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70107522)
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キーワード | ルター / ハーマン / ノヴァーリス / 神秘思想 / 敬虔主義 / 古典 / 聖書解釈 / ロマン主義 |
研究概要 |
本研究は、宗教改革に始まる新しい思想の流れがどのように展開されたのかを、聖書を中心とする古典との取り組みが思想生成に与っていくその様相を明らかにすることによって追求した。 松浦は、ルター最初期テクストのエディションの完成を目指した。具体的には、ルターによって訂正・引用・引照指示されるテクストの同時代刊本(1512年までの刊本)の網羅的突き合わせを終えるべく、テクストを原典にあたって再確認し、註解を完成するとともに、導入部執筆を目指した。オリジナル、また同時代刊本の参看のためと、専門研究者との意見交換のため、平成14年度夏、ドイツ・イギリス・フランスをはじめとするヨーロッパ諸図書館への研究出張をおこなった。 中井は、ルターの流れにつながるとともに、ルネサンスのヘルメス的自然思想や新プラトン主義を取り込んで成立したドイツ語圏自然神秘思想に注目した。特に、エーティンガーの聖書およびギリシア思想解釈の独自性、その影響を受けたものとして、カント、シェリング、ヘーゲル、ヘルダーリンの思想生成を明らかにすることが目指された。これにより、ルネサンスや宗教改革における古典読解・解釈が近代の古典とも呼ぶべきドイツ観念論という思想生成を再度始動させるという、古典のもつダイナミズムの解明を志向した。そのまとめのため、平成14年度2月から3月にかけて渡欧し、図書館で文献調査を行うと同時に研究者との意見交換を行った。 川中子は、18世紀に明確な形を取り始める新プロテスタンティズムの聖書解釈の動きに対して最初に反省を行い、自覚的にこれと対峙した人物ハーマンを、プロテスタンティズムの解釈学的伝統の上に位置づける作業を行った。そこでは、古典古代の修辞の伝統との取り組みをも視野におき、西欧の思想におけるヘブライ・キリスト教思想とギリシャ・ローマの古典の絡み合いをも浮き彫りにした。この作業とともに、まだ日本に本格的に紹介されていないハーマンの著作、ことにそのカントとの関わりの部分を、翻訳として刊行した(『北方の博士・ハーマン著作選』)。 適宜研究会をひらき意見交換し、3者の研究を関連づけ、統一的視点の獲得に努めた。
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