研究概要 |
前年度までの2年間はルネサンス期に焦点を絞り、プロテスタント系諸学校,イエズス会のユレージュ,および大学学芸学部におけるレトリック教育について,そのカリキュラムの理念と内容,また実際の教育方法について成果をあげたが,今年度からはその実績の上に立って17〜18世紀のアンシャン・レジーム期および19世紀における中等教育過程のレトリック教育を研究の対象とした。具体的には,- 1)完成期のイエズス会のレトリック教育。初年度から最終学年まで,キケロの著作を易から難に向かうように配列している。その意味合いについては,岩波書店刊の『キケロ選集』月報No13に載せた月村辰雄「学校教育の中のキケロ」を参照のこと。 2)18世紀に入るとイエズス会のラテン語によるレトリック教育に対する批判が始まる。フランス語によるオラトリオ会やパリ大学学芸学部のカリキュラム内容を検討した。また,実際に演説を作成する教育から,その演説を読解・分析する方向一と教育の軸足が移行した。イエズス会についても同様で,その移行のありさまを,ル・ジェー神父のレトリック教科書について検討した。 3)あわせて,18世紀には,パリ大学学芸学部を中心として,演説作成練習の各種論説文作成練習への模様替えが開始される。この傾向は特に,ディセルタシヨンという形を取って,次の19世紀に持ち込まれた。
|