10〜11世紀のビザンツ諸皇帝が推進した古典再生活動のサーヴェイ、および個別事例の分析(写本状況、成立の背景、内容分析等)を開始・推進した。 「マケドニア・ルネサンス」ともいわれる当該期のビザンツ帝国では、古典古代文化の連続の上に、その積極的継承・模倣の中から多数の古典作品が生み出された。マケドニア朝(867-1057年)の諸皇帝による文化振興によって、歴史、有職故実、また帝国統治のための実務分野において、幾多の注目すべき古典作品(『バシリカ法典』『帝国統治の書』等)が作成・編纂されたのである。本研究は、これら広義の文化活動の実態を総覧しつつ、個別作品の生み出された状況と文書内容を系統的に明らかにすることで、ビザンツ古典生成基盤の考察に努めている。 以上の古典継承・創造活動は、とりわけレオン6世(在位886-912年)、コンスタンティノス7世(在位913-959年)、またバシレイオス2世在位976-1025年)期に顕著に見られる。本年度は、これら諸帝のもとでの法制、社会制度に関する古典、また歴史作品に即して、個別作品の分析作業に着手した。考察の中心は、バシリカ法典成立後に発布された新法、また各種皇帝文書である。それら古典文書と法典との関係、文書相互間の連関、各文書テキストを伝える写本間の異同、教会法および歴史・年代記記述との連動性、等の観点から系統的分析を行なった。代表的な古典文書については日本語訳を準備した。古代法制、教会法制との関連の中で、検討素材の歴史的個性と、各素材を通じて見られる一般的傾向の分析・解読を進めた。
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