・計画中のイソクラテス著作集の全訳は、先にイソクラテス『弁論集1』でおよそ半ばを公にしたが、平成12年5月から再開される京都大学学術出版会「西洋古典叢書」第二期の刊行に合わせて、『弁論集2』に収録される著作の翻訳作業を行なった。これは、ギリシア散文の表現形成史といったやや専門的な関心のほかに、千古不易の言語教育の実例を一般に供することを目的とし、それなりの格調(古調)と読みやすさとを兼備した日本語に移しかえるべく、試訳と推敲の作業は現在も継続中である。 内容の概要は、まず人文的教養の立場を明らかにし、自らの推進する言論教育の意義を説いた『ソフィストたちを駁する』。次に、頌辞もしくは演示弁論が三篇。さらに議会弁論として模範的な構成をもって仕上げられた『プラタイコス』。九十四歳の老齢をおして執筆された最後の大作『パンアテナイア祭演説』。ほかに法廷弁論、書簡を含む。収録著作中、代表作に挙げるべきものは『アンティドシス』で、第一にイソクラテスがその著作全体を総合し、第二に自伝という新しいジャンルを展開したという点で、文学史上画期的な位置を占める。 ・「古典学の再構築」における全体シンポジウム、および全7調整班中のひとつ「古典の世界像」班(代表、内山勝利)における研究会に参加し、上記第2回シンポジウム「いま古典を問う」(平成11年7月17〜18日)においてはパネラーとしても参加。
|