1.『金楼子の研究』 『金楼子』の「知不足斎叢書」本をデータベース化し、全書の入力を終えた。同時に「知不足斎叢書」本のもととなった『永楽大典』をはじめとして、広く『金楼子』の文章を収集して、テクスト間の校勘を進めた。また、本文校訂と平行して、全六巻の訳注作成を計画し、これまでに「金楼子序」「自序篇」「立言篇」の会読を終えた。残る諸篇についても同様の会読を進めるとともに、その成果をまとめて、できるだけ早い時期に、良好なテクストにもとづく全書の訳注を完成して公刊するつもりである。 2.文学批評用語の研究 基礎作業として、六朝詩人の伝記、『文心雕龍』・『詩品』などの六朝期の文学批評、さらに唐宋以降の詩話を中心として、文学批評用語を収集し、データベースを作成した。現在ののべ語彙数は数千に達しているが、なお収集範囲を広げて増加中である。得られた語彙を分析すると、核となる文字の相互の組み合わせによって微妙な差異が表現されていること(例えば「清」「高」「潔」三字の相互の組み合わせなど)、それらの組み合わせが一定の語彙群を形成していることが、まず確認される。さらに、それぞれの語彙群が相互に補完しあって、より複雜な批評概念を作り上げようとしていることが看取される。 3.六朝詩人伝記資料の研究 三国から隋に至るまでの、四百年間にわたる六朝の代表的詩人七十九人を取り上げて、正史などを資料としながら、各詩人の伝記について、二十二人の研究者の共同研究により、精密で正確な訳注を施す作業を進めてきた。その成果は、『六朝詩人伝』(大修館書店)として出版された。
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