本年度は、これまでに引き続き、1.梁・元帝蕭繹による『金楼子』、2.六朝期までの文学批評評語、3.六朝期の伝記資料の三点にわたって研究を進めた。 1.『金楼子』は、入力校訂した本文テキストをもとに、ほぼ月一回の検討会を設けて、継続的な注釈の蓄積を加えている。現段階では本文のみを電子データ化しているが、今年度は注釈の電子データ化に着手した。また、蕭繹が『金楼子』を編纂した経緯について、研究分担者は『梁元帝蕭繹の生涯『金楼子』」(『六朝学術学会報』2)論文を発表した。 2.文学批評用語の研究は、『四庫全書』『四部叢刊』などの電子テキストを使用し、これまで作成したデータベースについて、おもに用例面での拡充を図り、特定の批評用語の時代的変遷が、よりはっきりわかるようにした。 3.六朝詩人の伝記資料研究については、『六朝詩人伝』の副産物として『六朝詩人群像』(大修館書店)を刊行する一方、『六朝詩人伝』の電子データ化、とりわけ本文・注釈の相互検索などのシステム化に着手し、いまだ基本的な段階にとどまっているものの、これまで基礎データとして採用してきた正史の本文に加えて、電子データ化することで伝記資料のヴァリアントを複層的に把握することができる見通しをつけつつある。 なお、研究分担者の著作『乱世を生きる詩人たち 六朝詩人論』(研文出版)は、著者のこれまでの研究をまとめたものだが、表題にあるように本科研とかかわりをもつものであるため、研究実績に挙げた。 さらに、研究としては個別に進めてきた上記三点を、電子データを相互にリンクさせることで有機的に結び合わせ、六朝期の著作の世界を構造的に示しうる方法について、おもにXML技術を中心に探った。なお、今年度は六朝期の著作にかかわる漢籍の海外調査を初めて行い、フランス国立図書館および東洋語図書館で調査を行った。六朝期の著作は主に明代刊本に拠らざるを得ず、該所蔵機関ではその方面を中心に調査を行い、時間的制約が多かったにも関わらず、一定の成果をあげることができた。
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