特定領域研究「古典学の再構築」全体の中では、古代ギリシア・ローマの世界像の解明を課題とするわれわれ両者は、その「計画研究」としては、とくに古代ギリシア世界に展開された哲学を中心とする思想的諸相を新たな観点から見直し、その実相を解明することに努めている。そのために、古代ギリシアの古典諸著作を支えている「論理」の質を再検討するとともに、とりわけギリシア世界そのものとオリエント諸世界との相互関連、すなわちギリシア思想におけるオリエント的要因の介在、その影響の実質の吟味に改めて注意を払いつつある。 とくに内山は、プラトン・アリストテレスの思想をも新たな視点から再把握するとともに、初期ギリシア哲学の成立過程、ヒッポクラテスおよびガレノスを中心とする古代医学思想の解明に重点を置いている。著書『哲学の初源へ-ギリシア思想論集-』は、古代思想の諸側面を多面的に取り上げ、ギリシア哲学発祥の背景にある基本モチーフあるいは時代精神的状況を明らかにしたものである。本年度執筆の論文「獣と神の間で」「エウパリネイオンの知的風土」も、そうした意図のもとにあるもので、いずれも従来のギリシア哲学・思想についての理解とは異なる視点と論点を提示することを試みている。また現在プラトン対話篇の特質について論じた著書、A.スレザークの著書の邦訳(近刊)の刊行を予定しているとともに、クセノポンおよびガレノスの原典の邦訳刊行を進めている。また納富は、当面はむしろギリシア思想文脈内在的な立場から、その特質の解明に重点をおき、内山と相補的に課題を遂行している。主たる成果として「著書『ソフィストと哲学者の間-プラトン「ソフィスト」を読む-』のほか、関連論文2編がある。
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