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2002 年度 実績報告書

イラン・イスラーム文献が描くモンゴル時代の世界像の研究

研究課題

研究課題/領域番号 11164239
研究機関京都大学

研究代表者

杉山 正明  京都大学, 文学研究科, 教授 (00127094)

研究分担者 志茂 碩敏  財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (80142058)
キーワードイラン・イスラーム文献 / モンゴル時代 / 世界像 / ユーラシア / 人類史
研究概要

イラン・イスラーム文献が描くモンゴル時代の世界像を研究する第一の作業として、入手済みのイラン・イスラーム文献古写本のマイクロ・フィルムのなかから、とくに緊急性の高いものを選んで焼きつけ、解読をすすめた。その結果、モンゴル時代のイラン・イスラーム地域における世界認識は、13・14世紀の当時としては極めてすすんでおり、東は中国から中央アジア・インド亜大陸・中東をへて西はヨーロッパにいたるまで、諸文明圏にまたがって文字どおりユーラシア・サイズで、従来の常識的見解をはるかに上回るレヴェルで確実かつ具体性のある知見を有していたことが克明にわかってきた。これは人類史の理解を書き換える意義をもつ。15世紀末以降のヨーロッパ人の「地理上の発見」までは、人類は各文明圏の枠のなかで相互に孤立しあっており、文明圏をこえたかたちでの世界の客観的イメージや具体的な全体像をもつことはなかったとする"通念"は、ヨーロッパ近代の知のなかで創作された虚像であったといわざるをえない。
また、これらの諸文明圏のなかで興亡した主要な国家や王朝についても、驚くべき正確さで描かれた「世界諸政権の交代系統図」とでもいっていいビジュアル化した文献がモンゴル時代のイランで作成された。この文献の存在は、13・14世紀において当時のモンゴル帝国の少なくとも支配層については、ユーラシア各地域の歴史と現状に関しての総合的情報とその認識が確実に存したことを証明する。人類史全体をひとまず総括する知的水準が、すでに13・14世紀に達成されていたわけであり、前近代アジアをともすれば低く見がちな19・20世紀型の知の体系は、根本的な誤謬をはらんでいたことを示している。
こうしたイラン・イスラーム文献の解読・分析の一方、これに関連するモンゴル時代の多言語文献のうち、とくに厖大な情報量のある漢文文献についても、完全同時代の元代刊本による元代典籍文献のマイクロ・フィルムから写真焼きつけをすすめた。その結果、中国史上でも画期となる世界認識のいちじるしい拡大・変化がモンゴル時代に生じていたこと、そしてそれはイラン・イスラーム文献の研究からえられる中東における世界認識とあきらかに連動しており、アジアの東西をつらぬいてかつてない真の世界像の出現がモンゴル時代に訪れていたことが判明した。

  • 研究成果

    (7件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (7件)

  • [文献書誌] 杉山正明: "地球環境学・古典学・歴史学"学術月報. 54-11. 61-65 (2001)

  • [文献書誌] 杉山正明: "羽田亨の人と生涯"京大東洋学の百年(京大出版会). 134-163

  • [文献書誌] 杉山正明: "元代中国は文化不毛の時代だったか"慶北史学. 25. 353-368 (2002)

  • [文献書誌] 杉山正明: "モンゴル時代のアフロ・ユーラシアと日本"モンゴルの襲来(吉川弘文館). 106-150 (2003)

  • [文献書誌] 杉山正明: "チンギス・カンのイメージ形成-時をこえた権威と神聖化への道程"生活世界とフォークロア(岩波書店). 271-301 (2003)

  • [文献書誌] 志茂碩敏: "カザン・カンが詳述するモンゴル帝国遊牧部族連合"東洋史研究. 60-2. 1-52 (2001)

  • [文献書誌] 杉山正明: "逆説のユーラシア史-モンゴルからのまなざし"日本経済新聞社. 288 (2002)

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公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

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