研究概要 |
中務は古代寓話,特にイソップ寓話の形成について考察したが,471話(Perry版テクスト)の中には,前3000年紀に実在した王を扱うアッカドの「エタナ物語」との関連が考えられる「鷲と狐」,前2000年紀シュメールにそのモチーフが遡る「蚊と牛」,古代エジプトより伝来したと考えられる「胃と手足」など,極めて古い起源を持つものがある反面,ローマ時代,さらにはビザンツ期になって「イソップ集成」に編入された寓話も多々あることが明らかになった.更に「鼠の会議」や「驢馬をつれた親子」のように中世以後にイソップ寓話とされるようになったものもあるので,民衆文芸における伝承ということは古典文学とは違った尺度で考えねばならぬのかも知れない. クレイクはヒポクラテスの医学理論が悲劇作家エウリピデスやプラトンの哲学書のなかにいかに受け入れられているかを考察し,その成果をリバプール(99年4月),カナダ・バンフ(5月),ギリシア・カバラ(8月),ニース(10月)などで発表した. 南川は帝政後期に「Historia Augusta」と呼ばれる伝記集がいかにして形成されたかについて考察を進めるほか,ブリテン島に進出したローマがどのようにギリシア・ローマの文化を土着化させていったかについても考察した.
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