研究課題/領域番号 |
11164241
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中務 哲郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (50093282)
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研究分担者 |
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
クレイク エリザベス・M 京都大学, 文学研究科, 教授 (10293846)
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キーワード | イソップ寓話集 / アゴーン / ヒストリア・アウグスタ / ヒポクラテス集成 |
研究概要 |
中務は「古代寓話の形成と受容」について、特にアゴーン(競い)タイプの寓話が文学に及ぼした影響を考察した。『イソップ寓話集』には、「狐と鰐」や「狐と狼」が家柄を、「狐と豹」や「燕と烏」は美しさを、「ライオンと狐」は多産さを、「北風と太陽」や「ゼウスとアポロン」は能力を、「胃袋と足」や「樅と木苺」は優位を、それぞれ争う話があるが、文学作品には登場人物がそれぞれ自分に都合のよい寓話を引用することにより論争を優位に進めようとする場面がある(ソポクレス『アイアス』、アキレウス・タティオス「レウキッペとクレイトポン』など)。アゴーン好きのギリシア人の精神の文脈の中でこの現象を考察した。 クレイクは「ヒポクラテス集成の伝承」について、特に辞書編纂者エロティアノスが「集成」に提供した素材について研究した。彼はアイスキュロスを4回、ソポクレスを14回、エウリピデスを15回、アリストパネスを25回引用するほか、ホメロスを頻繁に引用するが、これら文学テクストの利用を検討することにより、古代における医学知識の深さと広がりが明らかになり、ひいては「集成」の形成と伝播の問題を解く手がかりが得られた。 南川は引き続き『ヒストリア・アウグスタ』の翻訳を進めると共に、この作品と同時代に書かれた群小史書との比較も行った。古代末期にはラテン語によるキリスト教文学が成長を始めているが、明らかに異教の立場、元老院議員の価値観に立つ『ヒストリア・アウグスタ』が、当時のローマ社会の中で誰のためにどのような役割を果たそうとしたのかを検討するのがその目的であった。
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