研究概要 |
中務は「古代寓話め形成ど受容」について、昨年度に続いてアゴーン(競い)タイプの寓話(「狐と鰐」「燕と烏」「ライオンと狐」「北風と太陽」「胃袋と足」等、能力や美しさ、優位さを競う話)が文学に及ぼした影響を、アゴーン(演劇;コンテスト・運動競技等)好きのギリシア人の精神構造のなかで考察した。また、最近は古代ギリシアの小説に関心が移ってきたので、古代小説におけるイソップ寓話の利用も考察した、この種の研究としては、G.-J.van Dijk, Ainoi, Muthoi, Logoi : Fables in Archaic, Classical,& hellenistic Greek Literature2001が最新最大のものであり、そこではイソップの各話が後世の文学で利用されている箇所を網羅していると謳っているが、本研究では、この本で指摘されていない箇所を更に幾つか発見できた(アキレウス・タティオス、ソピストのアンティポン、デモクリトス、デモステネス等)。 南川は「帝政ローマ期の歴史書の伝承と受容」について、分量の多さと内容の多彩さで群を抜いている「ヒストリア・アウグスタ」を群小の史書、エウトロピウス、アウレリウス・ウィクトル、『皇帝史要略』などと比較すると同時に、文学としても第一級の伝記、タキトゥス『アグリコラ』と比較することにより、伝記の価値と使命ということについても思いをはせた。そして計画の中心においていた「ヒストリア・アウグスタ」の翻訳・注解はほぼ完成した。
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