中国古典詩のなかの「聯句」と称されるジャンルが、どのように生まれ、展開していったか、その歴史を調べることによって、直接の研究対象である韓孟聯句の特質を明らかにした。聯句は従来は君臣間の、また文人どうしの間の交遊の手だてであったが、韓愈・孟郊二人の手になる聯句では新たな詩的表現を模索する試みとしての性格が中心となった。彼らは古典詩の表現の規格を故意に逸脱する。それは詩語として定着していた語彙を敢えて避けて新奇な語を作り出すところから、外界を捉える見方が従来とは異なるところまで、詩を構成する要素の全体にわたっている。そこで開拓された表現手法は、その後の詩人たちの表現にも浸透し、中国古典詩の世界を豊饒にしていった。 我々は多くの研究者を集めて会読を行い、韓孟聯句のすべてを読了した。関連の資料を収集するため、書物を購入したほか、旅費を用いて各地の図書館を調査した。会読の結果は、パソコンを用いて詳細な訳注を作った。共同研究によって他の詩人を研究する人たちの参加が得られたために、韓愈・孟郊の表現の特徴がより鮮明に理解することができた。これによって聯句という一つの文学様式が、時代の流れのなかでどのように継承され、また変化していくかを追跡できた。さらに会読に際しては、訓読・訳・注のみならず、詳細緻密な分析を叙述することによって、古典詩読解に一つの新たな方法を作り出した。これは今後、聯句以外の作品においても、有効な方法として受け入れられよう。
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