前漢文学と後漢文学との性質の違いについては、従来から指摘されていたが、その理由についてはあまり詳細には検討されていなかった。本研究では、儒学古典の成立を承けて、前漢末の揚雌あたりから、文学作品の創作方法が変質し始め、過去の作品の模倣をふまえた上で独創性を打ち出すようになること、前漢中期の儒学古典の成立が、変質の主要な原因の一つであることを明らかにした。 この文学作品の創作法に改変をもたらされたことが、後漢以後の文学ジャンルと作品総数との激増の要因となったことを提示した。すなわち、先行作品の模倣という創作方法の確立が、後漢時期からの文学ジャンルと作品数の激増をもたらし、それが後の二千年になんなんとする中国古典文学の特質、たとえば典故の頻用などの方向付けをしたことを明らかにした。 従来こうした現象の説明として、後漢における紙の発明とその普及が指摘されていたが、紙の普及がかかる現象を大いに加淳したことは事実であるにしても、紙の発明以前からこうした現象が見られていたことを考えると、上のような創作方法の確立が、むしろ有力な原因の一つとして上がってこよう。 今後の問題として、後漢の他の文人たちを例にして、さらに創作方法について考察を続けていく必要があることを感じる。
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