研究概要 |
実施計画書に添って,東京・足利市・京都方面に,資料調査・収集のために出張し、禅林聯句(集)の所在を確認し、その一部については複写、写真撮影を行なった。 収集済みの資料のうち、特に「江東避乱聯句」(仮称)については、三十巻三千句というまとまりを有した作品集として処遇し、その本格的な調査に着手した。聯句の興行自体は、応仁の大乱が勃発した応仁元年(1467)八月より翌二年四月にかけて、主として横川景三、桃源瑞仙、景除周麟などが、避乱地である近江国山上の永源寺を中心にして行なわれた。この「江東避乱聯句」を対象とする研究が有効であるのは、戦乱下の文芸ということもさることながら、聯句集「東遊集」として成立した直後に、各句に解説を加えた「抄物」としても存在することである。 そこで、抄物としての作品集『[湯山例聯句]』(大谷大学図書館所蔵)と『成吠詩集』(竜谷大学図書館所蔵)の読解の第一歩としては、本文の固定化が必要となる。抄物の翻字に適した原稿用紙を用意して、両集を翻字し、第一次草稿を作成した。次いで、足利学校遺蹟図書館所蔵『[聯句集]』にも、同聯句に対する抄物が含まれているために、校合を鋭意準備中である。 なお、本年度の成果の一部としては、「戦乱の文芸としての禅林聯句-「小補東遊集」と「江東避乱聯句」(仮称)-」(『國語と國分学』第76巻第1号)を発展させて、「江東避乱聯句」の連衆であった横川景三と景除周麟の文筆活動について、雑誌論文二篇(別項11.参照)にまとめて公表した。
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