研究概要 |
有償契約における対価決定について、研究を進めた。 有償契約において、対価の決定は重要な要素である。中世において、哲学的正義理論の影響もあり、ローマ法文を基礎として、いわゆる「莫大損害」の理論が形成され、各国の近世において継受されたが、近代法においてはフランス民法とオーストリア民法のみが現行法規定として有し、日本民法典はドイツ民法と同様にこれを採用しなかった。 古典期ローマ法において価格形成がどのようになされたか、又、それがその後どのような変容を蒙ったか、その背景は何かは、長らく争われている問題の一つであり、今日に至るまで、未だ決定的な解答を見出していない。 研究代表者(西村重雄)は、かねて長らく研究を重ねてきた若年者原状回復に関する成果を基礎として、古典期においては価格形成が当事者の意思に全面的に任されていたこと、その半面として25歳までの若年者は原状回復の特典を付与されたこと、おそらくディオクレティアーヌス帝勅法(C.4,44,2/8)は若年者の原状回復要件の変更を定めたものと解されることなどを確認した。 研究分担者(児玉寛)は、とくに売買契約における代金の決定を当事者の一方又は第三者に委ねることの可否をめぐる論議について、オーストリア民法、フランス民法、ドイツ民法の編纂過程を辿り、各民法典におけるローマ法的基層とのヴァイアスを確認した。
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