研究課題/領域番号 |
11164264
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中川 純男 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60116168)
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研究分担者 |
高橋 通男 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (00012500)
西村 太良 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (90164590)
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キーワード | 古典解釈 / 古典文献学 / 中世写本 / スコリア / ヘレニズム |
研究概要 |
西洋における文化・教養はギリシア・ローマの古典を一つの基礎として形成、発展した。その過程は、ギリシアの古典的文化遺産がヘレニズム期を経て古代ローマ人に継承され、古代ローマの精神文化形成の糧となり、ルネッサンス期における古典の再発見によって西洋文化の中に深く浸透するに至ったということである。しかし、この伝承過程において古典的文化遺産の多くが失われた。残存する古典文献はいわば歴史の風雪のみならず、それぞれの時代の思想、嗜好、解釈の在り方という試練に耐えてきたと言えるのである。従って、古典は常に正しい解釈を享受してきたわけではない。というのは、それぞれの時代の文化的思潮が古典の精神を常に正しく解釈し、受け入れたかという問題には疑問符を打たざるを得ないからである。 西洋精神の形成に寄与する中で、古典は果たして恣意的な解釈を排除しえたのか。これは深刻な問いである。ヘレニズム期の文献批判学における古典解釈はどのようなものであったか。古代ローマ時代における古典とキリスト教思想との遭遇に際して何が起こったのか。また、写本の伝承はどれだけ正確であったか。このような問題を厳密に追及するならば、最終的には、伝承された古典文献の根底にある最小単位としての「言葉」のそれぞれの時代における解釈の問題に直面せざるを得ない。そして、この問題の探求にあたっては、ヘレニズム期の古典文献学、その継承としての中世ビザンチンの古典写本とスコリア、注釈及び諸辞典、古代ローマにおける初期キリスト教教父等の文献の批判的な研究と解釈が必要となる。このような観点から本年度は古典の伝承と解釈の研究を進めた。中川はアウグスティヌスにおける言葉の概念の研究に、西村は写本伝承の批判的研究に、高橋はヘレニズム期の古典文献学と言語解釈の研究に携わった。
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