現代においてはもちろんのこと、これまでの人間の歴史においてもキリスト教世界の古典が果してきた役割には大きなものがある。そうした古典の日本における受容を考える上で、16世紀から17世紀にかけて来朝したイエズス会士の手になる「キリシタン文献」について考えることは極めて大切である。本研究はその中の「語学書」を中心に考察を進めるものである。今回は日本における「キリシタン文献語学書」を特にインド・コンカニ語のそれと比べる中で、その「古典」としての性格を考える方向を目差した。その成果は以下の通りである。 1.コンカニ語キリスト教要理Doutrina Christam em lingoa Bramana Canarim(1622)全文の計算機入力完了、語検索可能な形をほぼ整える。その(コンカニ語キリスト教要理の)内容を日本語のドチリナ四種と比べ、当時のヒンドゥー教の影響などによる加筆を明らかとする。 2.16世紀ポルトガル語正書法書四種の計算機入力完成、校正中。語検索可能な形をほぼ整える。それによりラテン語の「規範」、ポルトガル語の「準規範」をもとに作られたイエズス会日本語ローマ字表記の性格を明らかにする。 3.コンカニ語語彙集写本(1626)の翻刻をA-Dまで完成。豊島正之氏のご厚意によりPDFファイル作成。2001年3月公表を目差して校正、印刷中。
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