研究概要 |
1.近世ペルシア語によるイスラーム世界史を記述した作品であるNizam al-Tawarikhの原典写本(トルコ共和国イスタンブル市、スュレイマニイェ図書館所蔵、Aya Sofya 3605,1347年完成)にもとづいて同書の解読を古典文献学手法で進めた。 2.Nizam al-Tawarikhの著者バイダーウィーの生涯、特に作品の成立時期と密接な関連のあるその没年について、同時代及び後世の史書から情報を集めてそれらを分析し、問題点を整理した。 3.Nizam al-Tawarikhの記述内容を、14世紀に成立した、他の近世ペルシア語によるイスラーム世界史に関わる史書(バナーカティー、シャバーンカーライ、ハムドゥッラーフ・ムスタウフィーの作品)の校訂本、原典写本の記述内容と対照し、それらの記述の情報源となったものを推定した。 4.原典写本解読において重要な意味をもつ、原典写本と同年代(13〜14世紀)の石刻碑文研究のため、トルコ共和国及びイギリスに出張し、かつてのセルジュク朝の首都コンヤを中心として現地で調査をおこない、碑文関係の資料を収集した。 5.上記の研究成果を公開シンポジウム「文明と古典」において「原典班」の研究報告として、「ペルシア語によるイスラーム世界史記述の始まりについて」と題して発表した。
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