本研究の目的:文献学的手法により、現存する資料から知られるかぎりの最古の仏教思想の解明につとめる。 本年度の研究実績:研究代表者自身が過去に文部省科学研究費によって構築したパーリ仏典、アショーカ王碑文の他、インターネット上で公開されている『リグヴェーダ』、『アタルヴァヴェーダ』、『シャタパタ・ブラーフマナ』、『ブリハッドアーラニヤカ・ウパニシャッド』、『チャーンドーギヤ・ウパニシャッド』、『マハーバーラタ』などのテキスト・データベースを用い、最初期仏典の思想をバラモン教思想の発展中に位置付けるための基礎的研究を行った。 本年度の成果:最初期仏典(紀元前4〜3世紀)に顕著に見られる人間の「意欲」に関する観察--人は自身の意欲によって形成されるという人生観--が、実は古来の伝統を受けており、「意欲」にたいする特徴的な着目が『リグヴェーダ』(B.C.15世紀頃)、『シャタパタ・ブラーフマナ』(B.C.8〜6世紀頃)、『チャーンドーギヤ・ウパニシャッド』(B.C.6〜5世紀頃)などに見られ、一貫した発展を跡付け得ることを指摘した。
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