研究概要 |
今年度は以下の三つの古典を中心に計量的分析に関する研究を進めた。 (1)『源氏物語』 すでに完成している『源氏物語』データベースを用い、『源氏物語』54巻における名詞、動詞、助詞等の各品詞の使用率を中心に計量的分析を行った。特に助詞の使用率に関しては、詳細な分析を行い、会話文と地の文(会話文以外の文)とでは助詞の使用方法が異なり、会話文では54巻の各巻で余り違いが見られないが、地の文では使用方法が異なることを明らかにした。また、このような地の文での助詞の使用方法の違いを分析することによって、54巻の成立順序に関して、新たな説を提案した。 (2)西鶴作品 計量分析のための井原西鶴作品のデータベース作成を進めた。『好色一代男』,『好色二代男』,『好色一代女』,『好色五人女』,『椀久一世の物語』の五作品に関しては、品詞の活用形等について情報の不完全な部分は残るが、一応データベースが完成したので、自立語約8万5千語に関し語彙用例索引を作成し、計量分析のための基盤を作った。 (3)サンスクリット大乗仏典 『十地経』,『八千領般若経』のデータベースを作成するとともに、すでに完成している『法華経』のデータベースを用い、不変化辞を中心に計量分析を進めた。この中で、韻文と散文では不変化辞の用い方に差があることなど今後の研究に必要となる重要な情報を得た。
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