研究概要 |
今年度は以下の三つの古典を中心に計量的分析に関する研究を進めた。 (1)『源氏物語』 作成済みの『源氏物語』のデータベースを用いた計量分析で,以下のことを明らかにした。 ・主要7品詞(名詞,動詞,形容詞,形容動詞,副詞,助詞,助動詞)に関する計量分析で,『源氏物語』の中の会話文と地の文における種々の言葉の出現率の差異を明らかとし,従来からいわれていた「会話文と地の文では使用される言葉が異なる」という説を数量的に裏付けた。 ・『源氏物語』の後半の10巻(「宇治十帖」)と前半の44巻では,名詞,助動詞などの品詞や,「ひと」「こと」などのよく用いられる言葉の出現率に統計的に有意な差があることを明らかにし,「宇治十帖」他作家説が出てくる根拠を明確とした。 (2)西鶴作品 計量分析のための井原西鶴作品のデータベース作成を進めた。昨年完成した『好色一代男』,『好色二代男』,『好色一代女』,『好色五人女』,『椀久一世の物語』の五作品に関しては,入力情報のチェックを行い,本年度入力した『武道伝来記』,『男色大鑑』,『西鶴諸国はなし』,『本朝二十不孝』,『好色盛衰記』の五作品に関しては索引作成の基礎作業を行った。 (3)サンスクリット大乗仏典 昨年は『法華経』に関し,不変化辞を中心に計量分析を進めたが,本年度は『十地経』,『八千領般若経』も含め,三経典のデータを用い不変化辞の使用率を分析し,法華経の成立過程の研究に必要となる重要な情報を得た。
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