本研究では単一サイズのナノチューブを作製し、その電子的物性をラマン散乱分光などの各種光学測定及び電子エネルギー損失分光によって明らかにする。炭素でできたナノチューブはグラファイト1層を丸めて、円筒状につなぎ合わせた形状の1次元物質である。 初(平成11)年度ではこの炭素ナノチューブの最も基本的で特徴的な物性である直径に依存する振動状態及び電子状態を測定して金属と半導体状態の違いを共鳴ラマン散乱及び電子エネルギー損失分光により実験的に明らかにした。特にラマン散乱測定において共鳴効果を観測してピークの振動エネルギー及びその直径依存性をグラファイトの分散関係がナノチューブの対称性に従って折り返される効果として説明した。 次(最終)年度では、III-V族を初めとする化合物半導体のナノチューブをアーク放電による気相法のみならず、コロイドなどの溶液法によって作製した。先ずコロイド法においてナノメータ粒子を生成する段階で界面活性剤を導入し、量や種類を変えて粒子の直径のみならず形状の制御を試みた。PbSO4について直径10nm以下の棒状の試料が得られた。又CdSeについては直径が1。3nm程度のフラーレンににた篭状の物質を生成した。以上の物質について物性測定を行った。
|