研究概要 |
本研究では先ず5、6員環のフラーレンネットワーク構造をとる炭素ナノチューブについて直径の単一な試料を作製し、その電子的物性をラマン散乱分光などの各種光学測定及び電子エネルギー損失分光によって明らかにした。次にIV族元素である炭素物質以外に、III-V族、さらにII-VI族化合物においてもチューブや篭状のネットワーク構造が安定でそれぞれどのような特異的物性を示すかを明らかにするための実験を行った。特にこれまでに報告の全くなかったII-VI族化合物において、4、6員環ネットワークの篭状構造で構成される物質の合成方法を見出し、質量分析、X線回折、電子顕微鏡、光吸収、ラマン散乱測定を行って構造の特徴と基礎的物性を明らかにした。 実験と解析:初(平成11)年度では炭素ナノチューブの最も基本的で特徴的な物性である直径に依存する振動状態及び電子状態を測定して金属と半導体状態の違いを共鳴ラマン散乱及び電子エネルギー損失分光により実験的に明らかにした。特にラマン散乱測定において共鳴効果を観測してピークの振動エネルギー及びその直径依存性をグラファイトの分散関係がナノチューブの対称性に従って折り返される効果として説明した。 次(最終)年度では、III-V族、II-VI族化合物をアーク放電による氣相法のみならず、コロイドなどの溶液法によって作製したコロイド法においては、PbSO_4について直径10nm以下のチューブ状の試料を得た。又II-VI族化合物として直径が0.8-1.4nmで数個の分子を内包するCdSe4,6員環篭状物質を生成し、構造解析と物性測定を行った。
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