BNナノチューブは、ナノスケールでの絶縁体ロッドや誘電体ロッド材料としての可能性がある。したがって、その誘電特性を支配するバンドギャプエネルギーが、チューブの太さの違いや円筒部分と端でどう違うかを明らかにすることは極めて重要である。このためには、電子顕微鏡を基本とした高分解能電子エネルギー損失分光法を用いるしかない。今年度は、以下の(1)-(3)の成果が得られた。 (1)チューブからの信号は微弱であるため、測定中の試料へのコンタミネーション(汚れ)は極力避けなければならない。そのために、ターボ分子ポンプ排気装置を購入し ・試料ホルダーおよび試料を常時クリーンな環境に保持できる真空保管装置を製作した。これにより、測定データの信頼性の向上が達成できた。 (2)われわれがこれまで開発してきた透過型高分解能電子エネルギー損失顕微鏡の検出系を改造し、鉛ガラスより透過効率のよい光ファイバー窓を採用した検出系とした。その結果、 ・ゼロロス強度の裾引き強度の低減が達成 できた。しかし、蛍光材の大きさの制約から測定範囲が狭くなることや、蛍光材から光ファイバーへ光が入る箇所で位置分解能が低減するという欠点が明らかになり、さらなる改造が必要であることが分かった。 (3)BNチューブ・BNコーンの電子エネルギー損失スペクトルを測定し、 ・コーンの先端部分は、BNチューブとほぼ同じ電子構造をしている ・コーンの先端部分と太く広がった部分とでエネルギーギャップが異なる ・BNシート端の伝導帯状態密度分布がBNシートと異なる 等のことを、実験的に初めて明らかにした。
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