ナノチューブからなるSTM探針の開発については現在名古屋大学の篠原教授と共同でニッケルや鉄の針上にナノチューブを直接成長する試みを行っており、探針の作成に成功し次第FIMによる探針の評価およびSTMによる観察を行う事となっている。また、フラーレン探針による超高真空中でのSTM観察についてはSi(111)7×7表面上に吸着したC_<60>分子をタングステン探針上に吸着させ、STM観察を行っている。その他フラーレン・ナノチューブに関する業績としては、フラーレンのフッ素誘導体(C_<60>Fx:X=44-48)をSi(111)7×7表面上に吸着させ、その吸着状態をSTM-HREELS(高分解能電子エネルギー損失分光法)で解析し、C_<60>Fx分子のフッ素原子のうちかなりの部分が分子の分解を経ずにシリコン表面上に移動する現象を見いだし、さらにこのフッ素の移動が、C_<60>Fx分子がシリコン表面上で転がりながらフッ素原子を表面上に転写していく事によって起こる事をSTMによる原子分解能観察によって解明した。また、フッ素をシリコン表面上に落とすことによってC_<60>Fx分子のHOMOの位置が浅くなることや、シリコン表面上に移動したフッ素原子よって起こるシリコン表面のエッチングの過程に高密度フッ素吸着領域における低温(300℃)でのエッチピットの形成と、高温(500℃)におけるフッ素脱離に伴うステップ端からのエッチングの2種類が存在することが判明する等の興味深い結果を得ている。これらの結果については学術雑誌への投稿を準備中である。
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