研究課題/領域番号 |
11165207
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中尾 憲司 筑波大学, 物質工学系, 教授 (30011597)
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研究分担者 |
岡田 晋 筑波大学, 物質工学系, 助手 (70302388)
鈴木 修吾 筑波大学, 物質工学系, 講師 (90241794)
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キーワード | アルカリ金属ドープC_<60> / 超伝導 / 動的Jahn-Taller効果 / 電子間相互作用 / 電子格子相互作用 |
研究概要 |
我々はこれまでアルカリ金属ドープC_<60>における電子間相互作用と電子格子相互作用をともに考慮した微視的モデルを提案し、これに基づいて以下のことを明らかにしている。 まず、A_2C_<60>とA_4C_<60>では電子間相互作用と電子格子相互作用が協力的に作用してバンドギャップを形成するため、系は絶縁体となる。一方、A_3C_<60>では電子間相互作用と電子格子相互作用が競合するため、系はかろうじて金属にとどまっているものの金属・絶縁体転移の近傍にある。今回、我々は上記の微視的モデルに基づいて、A_3C_<60>における超伝導をH_gモードの分子内フォノンを媒介とする電子間の引力によって理解できることを見出した。これによると、アルカリ金属ドープC_<60>における超伝導発現のためには、伝導帯が複数存在することが重要である。伝導帯が一つのみの場合にはクーパー対は伝導帯内でのコヒーレントな運動によってのみ安定化されるのに対し、伝導帯が複数ある場合にはさらに伝導帯間でのコヒーレントな運動が可能となりクーパー対がより安定化されるのである。さらに、我々は微視的モデルの解析から超伝導の発現基準を調べた。その結果、二つの伝導電子が対となってC_<60>分子内をコヒーレントに運動し、軌道一重項状態が形成されることが発現基準であることがわかった。この基準が満たされると、二つの電子間には実効的な引力が働き、系の基底状態は超伝導状態となる。この軌道一重項状態は動的Jahn-Teller効果による安定化により実現された状態とみなすこともできる。
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