1.炭素原子数が100以上の高次フラーレン類の光電子スペクトルを測定し、高次フラーレンのイオン化ポテンシャル(Ip)は炭素原子数が増えるにつれ、段階的に減少することを見いだした。また、C_<60>などで顕著に観測された、励起光のエネルギーの変化につれスペクトル強度が振動する現象は、これらの炭素数が非常に多いフラーレンでも観測されることを見いだした。 2.カルシウム金属内包フラーレン(Ca@C_<82>)の光電子スペクトルを測定し、空のフラーレンC_<82>とCa@C_<82>の骨格を形成するσ電子のエネルギー状態は大差ないが、価電子帯の浅い準位には大きな違いが存在することを見いだした。これはカルシウムからフラーレンケージに電子が移動することによるものであり、分子軌道計算との比較から、移動している電子は2個であると推定した。 3.多層カーボンナノチューブ(MWNT)からの電界により放出される電子の特性について検討した。MWNTから放出される電子電流量は印加電圧の増加につれ指数関数的に増加し、両者のFowler Nordheim protが直線性を示したことから、電子は主としてトンネル効果により放出されているものと結論した。印加電圧が高くなるとフェルミレベルよりも1eVほど深い準位からも電子が放出されるようになり、より深い準位からの電子放出も観測されるようになった。また、フェルミレベルよりも上の準位からも電子が放出されるのが観測されたが、これは熱励起により伝導帯に励起された電子によるものと思われる。
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