研究概要 |
カーボンナノチューブにはその円周やグラファイト蜂の巣格子の螺旋度によって金属的なものと半導体的なものがある。金属的ナノチューブの間の5・7員環欠陥対による接合系を流れる電子の透過率ついて我々は、強結合モデルを用いて円周比R7/R5と規格化エネルギー|E|/Ecのみによって透過率が決定することをこれまでに見出してきた。 ここで、R5,R7(R5≦R7)は接合された金属チューブの円周長で、2つのチューブのチャンネル数がともに2のフェルミレベル(E=0)付近のエネルギー領域|E|<Ecを考えた。 さらに金属ナノチューブと半導体ナノチューブの接合でのショットキーバリアを扱うために、強結合モデルに基づきハートリーフォック近似とグリーン関数法を組み合わせた計算法を開発した。最も安定であると思われるの構造として、隣接した5員環と7員環によって接合された半導体ジグザグチューブと金属ジグザグチューブを考えた(R5〜R7)。その結果、以下の結果を得た。 1:電子密度が5員環で高く、7員環で低くなり、それに対応して電子のポテンシャルもそれぞれ高く、低くなる。この空間変化は欠陥付近の格子定数程度の近距離に局在している。 2:状態密度のギャップの有無の違いのため、ゲート電圧をかけることによって注入された電子や正孔の平均密度は、金属チューブ側と半導体チューブ側の間で差が生じる。その電荷分布の誘起する、格子定数よりはるかに長距離のポテンシャル変化がショットキーバリアを形成する。 3:接合からゲート電極までの距離が短くゲート電極の遮蔽効果の大きい時は、ショットキーバリアによる電流の整流作用をおこらず、別の機構による通常と順バイアスの向きが逆の整流がおこる。
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