研究概要 |
密度汎関数法に基づく電子構造研究により,新炭素結晶として注目されるC_<60>ポリマー相のバンド構造,さらには,その安定性を解明した。そして,さらに圧力を加えた場合に生成が期待される,C_<60>3次元ポリマー相の存在を指摘した。この相は,新たな金属炭素結晶としてその研究が待たれる,大変興味深いものである。また,これまで存在が確認されていながら単離が進んでいないC_<74>フラーレンに,ポリマー化するフラ相がある可能性を発見した。これは,その異常に狭いバントギャップのために自発的にポリマーレンであることを示しており,単離の難しさの原因とも考えられる。さらに,C_<78>でも一次元ポリマーが非常に安定であることが判明した。このフラーレンも,単離はなされているものの非常に反応性が高いことが知られており,ポリマー相の実在が期待される結果である。他方,C_<60>超伝導体の研究では,アルカリ土類金属をドープしたBa_4C_<60>及びK_3Ba_3C_<60>,Rb_3Ba_3C_<60>の電子構造の解明を達成した。Ba_4C_<60>は,異方性の大きなフェルミ面を持つ,これまでにないC_<60>超伝導体であることがその重要ポイントである。今後のC_<60>超伝導体の物質開発において,大きな意議を持つ系である。また,K_3Ba_3C_<60>では,アルカリ金属であるKと,C_<60>との電子状態の混成が確認された。K_3C_<60>などのfcc型超伝導体では見られなかったもので,bcc構造を取ることが原因と考える。これら成果に加え,C_<60>列を内包したカーボンナノチューブ系の電子構造と安定性の解明も行なった。
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