3種あるとされる、C60を高温・高圧処理して得られるポリマー相の電子構造と安定性を、密度汎関数法を用いて解明した。その結果、通常の固体C60相と比較してこれらポリマー相は全てエネルギー的に同程度、あるいはさらに安定な、新たな炭素結晶相であることが判明した。電子構造も、ギャップの小さい半導体となることが予想される結果となり、新素材としても興味深い系であることが分かった。これら、既に存在が報告されている1次元・2次元ポリマーに加え、まだその存在が同定されていない3次元ポリマー相の探索も行なった。そして、2次元ポリマーに1軸性圧力を加えることにより、金属的特性を持つ3次元ポリマーができる可能性があることを見出した。 固体C60超伝導体として、Baをドープした体心格子を組むfulleride系が幾つか報告されている。しかし、その電子構造は、アルカリドープ面心立方格子系超伝導体と異なり、その研究がほとんど進んでいなかった。そこで、密度汎関数法を用いた電子構造計算により、体心立方格子を持つK3Ba3C60、Rb3Ba3C60超伝導体の電子構造を求めた。その結果、BaとC60、さらには、面心格子と異なり、アルカリ金属とC60においても、電子状態間にかなりの混成が存在することが判明した。また、初の非立方晶C60超伝導体であるBa4C60では、フェルミ面などに非常に大きな異方性があることも判明した。 ナノチューブでは、アルカリドープした系、さらには、C60をドープした系の電子構造と安定性を研究し、それらのフェルミレベル付近の電子状態に、自由電子的状態が大きく寄与するという、非常に興味深い結果を得た。
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