1 ランタノイド系列の金属原子を中心金属とする金属内包フラーレンの効率的合成と抽出・分離・精製を行なう。アーク放電法により生成・抽出された金属内包フラーレンは、HPLC法によって、効率良く分離・精製を行なう。ランタニド金属原子をフラーレンの炭素ケージの中に入れた金属内包フラーレンは、一種のスーパーアトムとして特徴付けることができ、空のフラーレンと同様に各種試薬により化学修飾できるかどうかは、極めて重要な研究課題である。各種試薬による化学修飾法を確立し、ランタニド金属内包フラーレンの反応性を検討した。化学修飾は、付加体の新しい機能発現の興味と共に、フラーレン骨格そのものの性質を基本的に解明するのに非常に有効な武器となっている。官能基化したランタニド金属内包フラーレン誘導体の電子的特性をレドックス電位、ESRスペクトルの測定により明らかにした。さらに、金属ドーピングによるフラーレンの電子構造の変化による新しい電子的特性の発現機構を解明した。金属内包フラーレンの安定な誘導体合成の成功は、化学修飾されたスーパーアトムとしてのLiやHe疑似原子の誘導体が有機化学的に合成できることになり、今までにない新規な化学の展開が期待できる。(赤阪、若原担当) 2 フラーレン類には、C60に代表される通常のフラーレン以外に、フラーレン内に金属原子を内包したLa@C82などの金属内包フラーレンやケージ上の炭素原子をヘテロ原子で置換したC59Nなどのヘテロフラーレンが知られているが、これら新規フラーレン類は、空フラーレンと大きく異なった物理的、化学的特性を有する。本研究では第4のフラーレン類として金属内包フラーレンのケージ上の炭素原子をヘテロ原子で置き換えた新規な金属内包ヘテロフラーレンの生成、単離をターゲット分子として取り上げた。まず始めに金属内包ヘテロフラーレンカチオンの生成、検出を目的とした実験を試みる。金属内包フラーレンとアジド化合物との反応より得られる付加体の合成、単離を行った。さらに、得られた付加体の高速原子衝突質量分析計中でのイオン化により、金属内包ヘテロフラーレンカチオンの検出を試みた。スペクトルデータの解析と合わせて、窒素の15N同位体を用いた実験による検証を行った。La@C81N、La2@C79Nの理論計算を検討し、C59Nとの比較を行う。特に、C59Nはケージ炭素上にスピンが存在するため2量体(C59N)2あるいはC59NRの形で安定に存在するが、金属内包ヘテロフラーレン(La@C81N、La2@C79N)の場合には金属が内包されることにより安定化され単量体として存在しうる可能性に興味が持たれた。(赤阪担当)
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