本年度は、開発したCWレーザー光励起による電流を検出する光電導性原子間力顕微鏡の空間分解能を上げるため、システムの改良を行った。また有機薄膜のナノメートル光電子物性を検討した。はじめに改良したシステムの性能をチェックするため、オクタンチオールを結合させた金蒸着マイカ(300℃でアニーリングしながら蒸着)の表面像と電導像(同時測定)を測定した。得られた電導像は、表面像とほぼ対応した。電流-電圧特性は、線形関係を示し、0.5GΩの抵抗を示した。これは、アルカンチオールのSTMの測定から得られた値とほぼ一致する。このことから電導性AFMで得られたイメージは、オクタンチオールを介して流れるトンネル電流のマッピングをあらわしているものと考えられる。次に銅フタロシアニン(CuPc)のITOガラスヘの真空蒸着膜(厚さ100nm〜10nm)を試料として用い、光電導性AFMによる光電導性イメージングを行った。表面像は、数十nm程度のサイズを持つ微結晶から成っている。これに対し、電導像や光電導像はフラットな像を示した。電導像は、キャリア密度と移動度のマッピングを示しており、光電導像は、ショットキーバリアの分布を反映しているものと考えられる。
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