研究課題/領域番号 |
11165222
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
大澤 映二 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (40001763)
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研究分担者 |
小澤 理樹 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30293757)
栗田 典之 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (40283501)
後藤 仁志 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60282042)
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キーワード | フラーレン生成機構 / 天然カーボンナノチューブ / 天然カーボンナノ粒子 / 石炭 / C60 / 天然フラーレン / TEM / HPLC |
研究概要 |
本研究の目的はフラーレン科学における未解決問題中最も基本的で且つ最も困難とされている生成機構の解明であるが、既往の研究方法とは異なり未知の低温高選択性合成法の発見に焦点を当てる。その為に過去数年来天然フラーレンの探索を行ってきたが、今年度は予想外の展開を遂げることができた。 既に平成10年度に中国雲南省昆明の西にある一平浪炭鉱から産出する瀝青炭中にC60とC70が異常に高濃度で含まれていることを確認していた。今年度は世界各地から60点に及ぶ石炭試料を収集してHPLC分析を行ったが一平浪の記録を越す例を見出すことはできなかった。秋に念願の一平浪現地調査を行ったが、炭鉱は現在操業中であるために入坑許可が得られず難航した。しかし雲南省石炭管理局と交渉して来年度から現地職員の協力を得て系統的な調査を始める見通しがついた。 一方昆明の東には、西側とは異なり中生代畳紀を起源とする四川-雲南地質帯が広がり、少量ながら良質な石炭を産出する。昆明東約100キロにある師宗県の郷鎮炭鉱付近で採取した鉱石から巨大な多層炭素ナノチューブ、炭素ナノ粒子などを発見した。この鉱石は石炭を含む龍湛層最下部が玄武岩と接している部分の断層露頭から採取したもので、硫化鉄を主成分とし、炭素含量は約9%に過ぎない。TEM写真によると、ナノチューブ、ナノ粒子ともに数百nmの巨大サイズを持つものが多く、長い地質学的時間をかけてゆっくりと生長したことが伺われる。貧炭素鉱石中にナノチューブ、ナノ粒子生成過程の全貌解明は極めて困難であるが、少なくともある程度の高温が発生する要因を見出し、且つ固相における物質輸送の困難を説明すべく現地で予備調査を行った。詳細は試料分析結果が揃うのを待たねばならないが、玄武岩層が高温で溶融していた時期に石炭層を加熱した可能性が高い。また、露頭から採取した玄武岩片に光熱反応の痕跡が認められたことから、超臨界状態にある地下水が加熱源と触媒を含む物質移動媒体の役割を果たしていたと予想される。更なる調査とモデル実験が必要である。
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