研究概要 |
今年度は,カーボンナノチューブの大量合成とその直径制御,BNナノチューブの合成と構造評価,ならびにカーボンナノチューブ電界放出エミッターの特性評価を行い,下記の成果を得た. 1.単層カーボンナノチューブの大量合成 アーク放電法による単層ナノチューブの大量合成を目指し,白金族二元混合系の触媒能を系統的に調べた結果,Rh-Pt混合触媒が格段に高い収率で単層ナノチューブを生成させることを見い出した.煤中のナノチューブの最大密度は50%以上であることを透過電子顕微鏡およびラマン散乱により確認した. 2.単層カーボンナノチューブの直径の制御 Rh-Pt触媒において,アーク放電におけるヘリウム圧の減少とともにチューブ径が小さくなることを突き止めた.これにより,単層ナノチューブの平均直径を1.02nmから1.5nmの範囲で制御が可能となった.また,最大収率が得られるヘリウム圧600Torrにおいては,平均直径が1.28nmで直径分布の幅は極めて狭かった(標準偏差0.07nm). 3.BNナノチューブの合成と構造 ホウ化ジルコニウムを窒素ガス中でアーク放電により蒸発させることにより生成したBNナノチューブの中に先端が三角旗形に膨らんだチューブを発見し,この形態からBN六角網面の中に奇数員環(五員環や七員環)が存在することを示した. 4.カーボンナノチューブの電界電子放出と電界蒸発 電界放出顕微鏡法により種々のナノチューブからの電流放出特性を評価した結果,先端を破った多層ナノチューブが最も優れた電子放出素材であることを見い出した.また,電子放出の場合とは逆極性の正の電圧をナノチューブに印加すると,C20+クラスターが選択的に生成されるという興味深い現象が観察された.
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