研究概要 |
今年度は,単層カーボンナノチューブの大量合成,多層カーボンナノチューブの成長と構造に及ぼす雰囲気ガスの効果,ならびにカーボンナノチューブ電界放出エミッターに及ぼす雰囲気ガスの影響評価を行い,次の成果を得た. 1.単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の大量合成 アーク放電法によるSWCNTの合成において,一連の希土類元素とNiとから成る二元混合金属の触媒能の優劣を系統的に調べ,SWCNTの多量合成に有効な触媒を探索した.その結果,La-Ni,Ce-Ni,Gd-Ni,Dy-NiおよびTb-Niにおいて,Y-Niに匹敵する非常に高い触媒能を見出した. 2.多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の成長と構造に及ぼす雰囲気ガスの効果 アーク放電法おけるMWCNTの成長に及ぼす雰囲気がスの影響を調べた。その結果,酸素および空気中においても,ナノチューブが成長することを見い出すとともに,アモルファス炭素やナノ粒子などの副生成物が少ない純度の高い試料が得られる事を明らかにした。 3.カーボンナノチューブ電界放出エミッターに及ぼす雰囲気ガスの影響評価 MWCNTの清浄表面からの電子の電界放出は,ナノチューブ先端の五員環から優先的に起こる事を見い出し,さらに隣接する五員環から放出された電子波の間の干渉を示唆する干渉縞も観察された.この観察成果は,ナノチューブ先端に五員環が存在すること,およびナノチューブからの電界放出における五員環の重要性を実験的に初めて示した。また,圧力10^<-7>から10^<-5>Torrの酸素,水,窒素およびアルゴン雰囲気においてMWCNTからの放出電流の経時変化を測定した結果,放出電流の減少速度は大きい順に,酸素,水,窒素,アルゴンであり,酸素がナノチューブエミッタの寿命に最も悪影響を及ぼすことを明らかにした。
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