本研究は、低密度炭素のフラーレン(C60)およびナノチューブの高温高圧処理(1500℃、15GPaまで)による高密度化過程で、新しいカーボンネットワークをもつ新炭素固体を探索することを目的とし、従来研究されてきたポリマー相ではなく、主としてC60などの崩壊により生成するアモルファス炭素を対象にした。初期の計画では、(1)X線解析、UVラマン、NMRのケミカルシフトによる固体構造および炭素結合状態(sp2とsp3結合の比率)を調べ、(2)電気伝導度及びホール効果測定による電子物性測定を行うとしていた。計画したUVラマン測定は、機器が揃わないことから断念し、通常の可視光ラマン、X線解析もアモルファス炭素の解析手法として強力な武器でないことから、新たにin situ観察による新しい硬度測定装置を開発し、レーザーパルスによる微少試料弾性測定装置を作製(準備中)を行い、アモルファス炭素の力学的物性を調べると同時に、その力学挙動を手がかりにNMR測定用試料のサンプリング温度・圧力条件を決めることを考えた。現在までの結果と今後の展開を以下に記す。 1.in situ観察した真の硬さは、例えば処理温度800℃で処理圧力P=5.6GPaから8.4GPaまで変化させたとき、硬さがH=4GPaからH=13GPaに単調増加するが、その後P=12.5GPaまで変化のない遷移領域を経て、P=15GPaでH=47GPaに急上昇し、アモルファス構造の急激な変化を示唆した。このアモルファス炭素は、非常に弾性回復量が大きいため、除荷後の圧痕から求めた従来のVickers硬さは、その1.5〜2倍以上の大きな値を与える傾向にある。 2.いずれの生成したアモルファス炭素も、導電性をもち、半導体的温度依存性を示した。 3.今後の展開として、まずは要所でNMR測定に必要な量の試料を収集し、アモルファス炭素の構造変化を調べたい。
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