研究概要 |
金属内包C_<60>(M@C_<60>)の高効率合成と分離精製法の確立に向けて,ユウロピウム内包C_<60>(Eu@C_<60>)をターゲットとして研究を行った.従来の小型アーク放電装置の50倍のスス生成が可能な大型アーク放電装置を作製し,Eu@C_<60>を含有するススの生成を行った.これを昇華して,分子量の小さな不純物カーボンと,従来の方法では除去が困難であった金属内包高次フラーレン類を完全に除去した.さらに,アニリンによる抽出と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行って,純度99%のEu@C_<60>を得ることに成功した.さらに,アニリンを除去した粉末試料のXANESとXAFS測定を行い,電子状態と分子構造に関する情報を得た.Eu原子の原子価は,Eu L_<III>-edge XANESの立ち上がりエネルギーが+3価のものに比べて,6eVだけ低エネルギー側にシフトすることから+2であると決定できた.最近,Eu@C_<82>についても,紫外-可視吸収スペクトルの類似性からEu原子が+2価をとることが報告されており,フラーレン分子ではEu原子は+2価を取る傾向のあることがわかった. さらに,Eu原子と第一隣接ならびに第二隣接炭素との原子間距離をEu L_<III>-edge XAFSから直接求めて,Eu原子が内包されていることを確認するとともに,Eu原子はゲージ中心に存在するのではなく,中心から1.4 Åずれて存在していることをみいだした.この結果は,Eu@C_<60>を優性に含有するススのXAFSから得られた結果と同じである.また,Eu-C間の共有結合的相互作用も明らかになった. Eu@C_<60>アニリン溶液の吸収スペクトルで,Eu原子から2個の電子がC_<60>ケージ側に移動することに伴って,起ち上がりのレッドシフトが観測された.また,吸収スペクトルからEu@C_<60>がアニリン溶液中で錯形成している可能性のあることがみいだされた.
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