研究概要 |
金属内包C_<60>(M@C_<60>)の大量合成法および精製法を確立し、得られたM@C_<60>精製試料を用いて構造と物性に関する研究を行った。最初に、Eu@C_<60>とDy@C_<60>の煤を、それぞれの金属酸化物とグラファイトの混合ロッドのアーク放電により得た。次に、得られた煤からM@C_<60>をアニリン抽出し、アニリンを展開液とした高速液体クロマトグラフ(HPLC)により精製試料を得た。純度99%の試料を用いて、XANES測定を行い、Eu@C_<60>のEu原子の原子価が+2であり、Dy@C_<60>のDy原子の原子価が+3であることを見いだした。さらに、Dy@C_<60>のDy L_<III>-edge EXAFSにより、Dy周りの構造を調べた。その結果、Dy原子は、C_<60>ケージの五買環上に存在し、中心から1.25Åずれた位置に内包されていることがわかった。この結果は、鈴木らにより行われたEu@C_<60>に対する理論計算から予想された値である1.2Åと一致している[1]。また、XANESから得られたEuならびにDyの原子価は、EuおよびDyを内包した高次フラーレンの原子価とも一致している[2]。ラマン測定を行い、A_g(2)ピークが、空のC_<60>のものと比べて、19cm^<-1>低波数シフトしていることを見いだした。これは、Dyから電子が3個完全にC_<60>ケージ上に移動していることを示している。この場合の電子構造は、アルカリ金属原子をドーピングしたC_<60>結晶(A_3C_<60>)のものと一致するため、超伝導特性が出現することが期待される。現在、超伝導特性を調べるための物性測定を行っている。また、Dy@C_<60>結晶のX線粉末回折から、Dy@C_<60>が面心立方構造(fcc)をとることがわかった。粉末回折を10から723Kの広範な温度領域で測定しており、現在解析中である。また、この結晶への金属ドーピングと、単層カーボンナノチューブ(SWNT)へのM@C_<60>内包、すなわち、M@C_<60>@SWNTの作成に向けた研究を実行中である。 [1]S.Suzuki et al.,Chem.Phys.Lett.327 291(2000). [2]S.Iida et al.Chem.Phys.Lett.in press.
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