炭素数100を越える高次フラーレンに関する構造ならびに物性研究を行うため、系統的単離法の改良を試みた。カラムにPBB、溶出液にトルエンを用いたHPLCにより、炭素数が136までの高次フラーレンを系統的に単離できることを確立し単離に成功した。UPSなどの測定により、その電子状態の解明を行うことを計画している。金属フラーレンに関する研究では、新たにU、Thなどのアクチノイド元素を内包したフラーレンを作成することに成功した。金属内包フラーレンの構造に関する研究に関しては、TmおよびCa金属内包フラーレンのケージ構造を決定した。その結果、4種異性体のケージの対称性は、C2、C2v、C2、C3vであることを明らかにした。この結果、内包される金属の酸化数が+2の金属フラーレンと+3である金属フラーレンにおいて共通のケージがあることが明らかになった。ケージ中における金属元素の電子状態を調べるため、種々の金属フラーレンのXANESスペクトルを測定した。その結果、複核金属フラーレンにおいてはTm元素が+3の電子状態を取るのに対して、単核金属フラーレンにおいては、+2の酸化数状態を取ることを明らかにした。このようにケージに含まれる個数により、電子状態が変化するケースは初めである。また、Uは+3価であることを、Thは+3ないしは+4価であることを明らかにした。+3価のUは珍しく興味深い。また、CaとHoを内包した金属内包フラーレンを合成単離した。ケージが-5価になっているものは初めてである。
|