研究概要 |
シリコンクラスレート化合物のNMR実験を行った。特に、8Kの超伝導体であるBa_8Si_<46>と、その一部のシリコンを銀に置換したBa_8Ag_XSi_<40>(x=1,2,3,6)の電子状態を詳細に調べ、以下のことが明らかになった。(1)非等価な3つのシリコンサイトが見つかった。その強度比は構造解析の結果によっては説明できず、Si_<20>ケージ内のバリウムイオンが中心から変移している可能性が議論された。(2)超伝導を示すクラスレートは、大きなナイトシフト、したがって大きな局所的電子状態密度を有するシリコンサイトが存在することが確認された。(3)バリウムサイトの局所的電子状態密度を超伝導に転移温度に正の相関があることが分かった。(4)これらのことから、バリウムとシリコン間の混成軌道が超伝導に重要でることが強く示唆された。(5)超伝導状態を調べ、T_2およびナイトシフトの異常を見出した。現在、その原因を探る実験を継続中である。 また、比較および物性探索として他のネットワーク系(アルカリーC_<60>化合物、アルカリーゼオライト系、炭素ナノチューブ)の研究を行った。炭素ナノチューブでは、X線回折実験から大量のガス吸着の可能性を、また、ガス吸着による電気抵抗の顕著な変化を見出した。カリウムを吸蔵したゼオライト系では、超格子構造を発見し、さらに、その低温磁性との相関を明らかにした。アルカリーC_<60>化合物では、(NH_3)K_3C_<60>の電子状態が、全温度領域で局在スピン系として記述し得ること、低温状態が反強磁性であることを示した。
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