(1)Sc_<3-n>La_nN@C_<80>(n=0-3)の構造と電子状態 昨年度にSc_3N@C_<80>の構造と電子状態を明らかにしたが、本年度はScをLaで置換したSc_<3-n>La_nN@C_<80>(n=0-3)の理論計算を行った。ケージのC_<80>は6-の状態が安定であるが、La原子の数が増す(nが大きくなる)にしたがって(Sc_<3-n>La_nN)^<8+>C_<80>^<8->の電子状態に近づく。また、C_<80>の空間的な制限のために、内包される(Sc_<3-n>La_nN)^<8+>が不安定なピラミッド構造を強いられる。これらの結果、nが大きくなるほど不安定になり、実験での生成比と一致するという興味深い結果を得た。 (2)Sc_2@C_<84>の異性体の構造 これまでに単離されているSc_2@C_<84>の3つの異性体のうち、2つは我々が理論予測した構造と実験結果が一致する。残りの1つは、理論と実験で提唱する構造が異なり、^<13>C-NMRのピークの本数に1本食い違いがある。ところが、実験で提案された構造は不安定なばかりでなく、ポテンシャルエネルギー曲面上の極小点に対応しないことを明らかにした。このことは、仮に実験で提案される構造が測定されると、倍近くのNMRピークを示すことを示しており、再実験の必要性を示唆した。 (3)フラーレンの内部状態の変化 フラーレン内部の性質を、静電ポテンシャルを用いて明らかにした。a)骨格のC原子をSi原子に置換する(ケイ素フラーレン)、b)原子数を増やす(巨大フラーレン)、c)フラーレンにCH_2やSiH_2などを付加する(フラーレン誘導体)ことにより、フラーレンの電子状態を変化させると、内部場が大きく変化することがわかった。このことは、金属内包フラーレンに付加反応を施すと、内包金属の位置が変わったり、止まっていた金属がある範囲内で動きだしたり、逆に動いていた金属が止まったりするという、興味深い結果を示している。
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