束状になっている単層カーボンナノチューブの集合体を圧縮成形したマット状の固体試料を金の基板上に固定し、超高真空極低温対応走査型トンネル顕微鏡を用いてその電子構造を調べ以下の知見を得た。 1.個々のチューブの特徴的な電子構造として、あるエネルギー領域でチューブの軸方向に非局在化した強い一次元的状態が存在することが見出された。 2.一つの束の中のチューブは非常に良く似た電子構造を持っている場合が多いことが高い確率で見出されたが、異なる束で比較すると異なっている場合が多いことも見出された。 3.単層ナノチューブにルビジウム金属をドープすると、フェルミ面付近の電子構造に特徴的な変化が現れ、より金属的な構造をとることが見出された。低温域ではこの変化がより顕著になるが、ギャップ的なくぼみもより深くなり一次元金属の電子状態の不安定性との関連性の上で興味深い結果が得られた。
|