研究概要 |
チャープパルスによる光会合反応のレーザー制御 近年、最適化されたレーザーパルスによる化学反応制御の可能性に多くの関心が集まっている。これまでに、いくつかの実験的および理論的方法が提案されているが、本研究ではその中の一つであるチャープ(位相変調)パルスを用いた量子制御について考察を行った。特に分子冷却との関連で低エネルギー原子どうしの光会合反応の制御に関して理論的解析を行った。具体的に反応0+H-〉OHのパルスレーザー下での波束ダイナミクスについて、特にチャープパルスを用いることにより生成する2原子分子の振動状態分布の制御、分子のレーザー冷却の可能性、さらに自然放出の影響を検討した。レーザーパルスとして, E(t)=E_psin^2(πt/τ_p)cos[ω(t)t]ω(t)=ω_p+βtを用い、4096の等間隔グリッド、時間きざみ0.05fsで時間依存シュレジンガー方程式を時間発展させ波束を計算した。βの正負によりそれぞれ正負のチャープパルスと呼ぶ。中心周波数として連続状態と束縛振動状態(v=15)間のエネルギー差を、また2原子分子OHのポテンシャル、双極子モーメントとしてそれぞれモース関数、Mecke関数を用いた。レーザー場のない場合、波束はポテンシャルの壁に衝突し跳ね返されてもどってしまう。つまり原子どうしの弾性衝突が起こる。一方チャープパルスを照射すると、波束の一部がポテンシャルの井戸に留まり2原子分子の形成が見られた。これはレーザーによる誘導放射とチャープによる多段階振動遷移によると考えられる。
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