超高速反応の波束ダイナミクス

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11166216
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 山下 晃一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (40175659)
• 研究分担者: 中島 徹 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (70292779)
• キーワード: 表面吸着分子 / 光誘起脱離 / パルスレーザー / 波束計算 / 電子励起状態 / CASSCF計算 / ダイナミクス / Si酸化表面

研究概要

表面吸着分子の光誘起脱離ダイナミクス
表面超高速過程に関して、表面吸着分子の光誘起脱離のダイナミクスについて波束計算を行った。最近行われた実験ではXeの吸着したSi(100)清浄表面と酸化表面にナノ秒パルスレーザーを入射して、脱離したXeのTOF分布が測定されている。その結果、酸化表面では、清浄表面では見られなかった0.80eV、0.25eVという大きな並進エネルギーを示すピークが観測された(それぞれαピーク、βピークとする)。特に、αピークは入射光のエネルギーが3.5eV以下では観測されないことから、何らかの電子励起状態が関与した結果脱離が起きているのではないかと考えられる。そこで本研究ではこの光誘起脱離過程の理論モデルを構築し、脱離機構を明らかにすることを目的とした。Xeの吸着したSi酸化表面において、CASSCF計算により、電子励起状態で引力的なポテンシャルエネルギー曲線が見つかった。バックボンドの酸化を考慮したモデルにおいて、励起エネルギーが実験値とそれほど違わず、Xeが表面に強く束縛されている。この電子励起状態への励起によって引き起こされる脱離の波束計算により、妥当な平均寿命で平均並進エネルギーの実験値を再現できた。

研究成果

• [文献書誌] 中島,田中,山下: "A theoretical study of aluminium chemical vapour deposition using dimethyl aluminium hydride"Surface Science. 444. 99-112 (2000)
• [文献書誌] 中山,山下: "Theoretical study on the structure of Na^+-doped helium clasters : Path integral Monte Carlo calculations"Journal of Chemical Physics. 112・24. 10966-10975 (2000)
• [文献書誌] J.Manz,H.Naundorf.山下,Y.Zao: "Quantum model simulation of complete So→Sl population transfer by means of intense laver pulses with opposite chirp"Journal of Chemical Physics. 113・20. 8969-8980 (2000)
• [文献書誌] 中山,山下: "Path integral Monte Carlo study on the structure and absorption spectra of alkali atoms (Li, Na, K) attached to superfluid helium clustac"Journal of Chemical Physics. 114・2. 780-791 (2001)
• [文献書誌] 大脇,亀谷,山下: "Electric Field Effects on the Adsorption, Charge Transfer and Vibrational State at metal Electrodes : A DFT study"Bulletine of Chemical Society of Japan. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] 大脇,山下: "A DFT study of Electric Field Effects on Protin Transfer Reactions at H^+(H_2O)_2/Pt(III) and Ag (III)"Journal of Electroanalytical Chemistry. (印刷中). (2001)