Mn12核金属錯体クラスター[Mn_<12>O_<12>(MeCO_2)_<16>(H_2O)_4]は、上向きと下向きのスピン間にポテンシャル障壁をもち、単分子磁石と考えられている。さらには、障壁をすり抜けるトンネル効果による磁気緩和も知られている。 前年度の研究により、結晶溶媒を含む結晶[Mn_<12>O_<12>(PhCO_2)_<16>(H_2O)_4]・2PhCOOHの合成に成功している。今年度は詳細な磁気を行い、この系はブロッキング温度の異なる2種類の分子が結晶内に共存するモザイク結晶であることを見いだした。結晶を用いた磁気異方性の測定や量子トンネル効果の測定から、双方の分子の磁化容易軸に決定的な違いがあることを発見したほか、結晶構造解析により、この磁気的な違いが、Mn_<12>分子に含まれるMn^<3+>サイトのヤーン・テラー変形の差異に起因していることが明らかになった。
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