研究概要 |
遷移金属とケイ素等の典型元素との化合物の結合や反応は錯体触媒反応との関連から興味深いが、これらにはd軌道電子の関与が大きく、実験化学のみならず理論化学からも興味深い。実験、理論化学アプローチを並行して組織的に行うことによってこれらの新たな反応を開発ならびに解明することが可能になる。 触媒として一般的なロジウムや白金を有するシリル錯体を出発点として、結合形成に関わる素反応の検討を行った。シリル白金錯体は熱によって、橋かけシリレン配位子をもつ環状の三核錯体を生成する。構造解析や経験的な分子軌道計算の結果から、電子供与性配位子のみで安定化された三核の有機ケイ素ム白金(0)錯休のはじめての例であることがわかった。単核のシリル白金錯体は、Rt-Si結合間のアセチレンが挿入と、分子内環化と脱シランを行ってシラプラチナシクロブテンを生成する。これは環状ケイ素化合物の合成やシラシクロプロペンの変換の中間体として長く提案されていながら、単離できなかったものであり、低エネルギー中間体を経る反応経路を明らかにするものである。 上記三核錯体はアルキンとのC-Si結合形成反応をする。フェニル基の移動に伴うアセチレンと配位ケイ素との付加を経てケイ素配位子によって白金が線状に橋かけした錯体を生成する。ビスシリル白金錯体とニトリルや酸素との反応から、安定なSi-O, Si-N結合をもつ錯体を得た。 ハロゲノ遷移金属化合物は有機シランによって還元される。これらの反応がケイ素上の置換基によって反応速度の顕著な変化をおこすことをみいだし、協奏的な還元的脱離反応を明らかにした。 上記反応により生じる配位不飽和なロジウム中間体は、他の錯体と容易に反応して特徴ある複核錯体を生成する。以上のように理論、実験両面からのアプローチにより新しい錯体合成反応ならびに変換反応をみいだし、触媒反応の機構解明、開発に資する多くの知見を得た。
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