溶媒の自由度に対して調和振動子浴を仮定することにより、溶質分子の振動エネルギー緩和のシミュレーションを経路積分影響汎関数理論を用いて行った。ここでは、古典的な分子動力学計算から溶媒和構造を発生させ、1フォノン、2フォノンスペクトル密度を、浴分子全体のノーマルモード解析と、溶質一溶媒間の線形、非線形カップリングの係数から求めた。水溶液中のCN^-イオンに対して求めた緩和定数は、実験値とオーダー的によい一致を示した。さらに、溶媒のどのような運動が緩和に大きく寄与しているのかについての解析を行ったところ、水の回転秤動運動どうしの2フォノン過程と、水の分子内変角振動運動と回転秤動運動との2フォノン過程が中心的役割を果たしていることなど、緩和の分子機構を明らかにした。 溶液中における振動緩和に対しては、上述した方法以外にも、量子-古典混合系近似における平均場近似を用いて遷移の動力学を解析することを試みている。この方法に基づいて、同じモデルに対して古典的な力の相関関数から時定数を求めた緩和定数と一致のよい値が得られ方法論の妥当性が示されており、エネルギー散逸過程を時間軸に沿って分子論的に議論することが可能となった。 一方、フェルミ統計やボーズ統計に従う量子液体に関しては、静的な性質を見積るシミュレーション手法の提案を行い、簡単なモデル系に対してこれを検証した。
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