研究概要 |
1.III-V族半導体結晶成長について、M(CH_3)_3/H_2/NH_3系(M=Al,Ga,In)気相で起こる寄生反応の反応機構を非経験的電子状態計算により検討した。Alを含む系で寄生反応の反応性が増大し、その鎖状生成物が発熱的に成長することにより結晶成長が阻害されることを明らかにした。Alの高い反応性は強いAl-N配位結合に基づいていることが領域密度汎関数理論の応用計算により示された。第一原理計算により、GaN結晶にGa原子・N原子の吸着過程についても検討し、結晶成長の面方位依存性を示すとともに、結晶成長のドライヴィングフォースが電子集積に基づく領域電子エネルギーの安定化によるものであることを実証した。 2.いくつかの面方位について、TiN表面にF原子が配位するプロセスに関して第一原理計算を用いて検討した。各TiN表面においてF原子が表面に近づくにつれ大きく安定化し、TiN(111)表面についてはF原子が配位しているTi原子に2つ目のF原子が容易に配位することが示された。F原子吸着の電子過程を領域密度汎関数理論の応用計算により議論した結果、フッ素配位数が2の場合においても、フッ素配位のドライヴィイングフォースが電子集積に基づく領域電子エネルギーの安定化によるものであることが実証された。 3.Si(100)-1×1ダイハイドライド表面およびSi(100)-2×1モノハイドライド表面について、フッ素原子によるエッチング反応を第一原理計算を用いて検討した。フッ素原子のシリコン表面内部への侵入については1×1、2×1両表面ともに発熱的に進行し、その安定化エネルギーは両表面ともに水素終端Si(111)面と比較して著しく大きいことが示された。フッ素とシリコン表面間での相互作用やシリコン格子の結合の変化は領域密度汎関数理論に基づく運動エネルギー密度により系統的に理解できることを明らかにした。
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