研究概要 |
1.通常、相対性理論は化学の分野で小さな補正としてのみとらえられてきたが、そうではなく、相対性理論のよりどころである近接作用の観点から導き出されたQEDのハミルトニアンは、非相対論極限においてすら全く新しい化学的相互作用描像をあたえることが初めて明らかになり、従来の遠隔作用に基づく化学的相互作用の描像はことごとく塗り替えられた。 2.III-V族半導体結晶成長について、MR_3/H_2/NH_3系(R=Me, Et ; M=Al, Ga, In)気相で起こる寄生反応の反応機構を非経験的電子状態計算により検討した。Alを含む系の高い反応性は強いAl-N配位結合に基づいており、そのアルキル基置換基効果を量子エネルギー密度により明らかにした。第一原理計算により、GaN結晶にGa原子・N原子の吸着過程についても検討し、結晶成長の面方位依存性を示すとともに、結晶成長のドライヴィングフォースの描像を量子エネルギー密度により示した。 3.励起状態リチウムおよびナトリウムクラスターモデルに関して、非経験的電子状態計算によりさまざまな高スピン電子状態の原子間相互作用の議論を行った。量子エネルギー密度は電子状態により特徴的な分布を示し、電子相互作用の様子や微視的な電子ストレスの描像を適切に表現することを示した。リチウムクラスター成長による安定化エネルギーが、相当するナトリウムクラスターのそれより、極めて大きいことを明らかにした。 4.N2^++O_2系の四重項状態電荷移動反応について、反応物状態・生成物状態のポテンシャルエネルギー面を高い精度で表現しうる微分可能な関数を決定し、得られた関数を用いて波束ダイナミクス計算を行うことにより、振動量子数依存症の影響など反応過程の詳細なメカニズムを明らかにした。さらに、電荷移動過程を量子エネルギー密度により議論した。
|